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2025年第1四半期、バンコクのオフィス市場は新規供給の増加による空室率の上昇と貸主間の競争激化という状況が続いていると、CBREタイランドが報告した。
とくにグレードA+のCBD(中心業務地区)ビルやグレードAの新築ビルへの移転が活発で、純需要(net take-up)は堅調であった。一方、グレードBのビルでは純需要がマイナスとなった。
2025年3月28日に発生したミャンマーの地震(バンコクでも揺れを観測)は、オフィス選びの意思決定に新たな視点をもたらした。
企業の安全性に対する関心が急激に高まり、入居の優先順位や基準が見直されている。
CBREは、地震以降にバンコクのオフィス市場で顕著に見られた3つの主要な変化を指摘している:
入居中・検討中の企業双方において、建物の耐震性が最重要課題に
建物の構造確認・安全証明の要求が急増
貸主には、バンコク都(BMA)の指針に基づく安全確認が求められている
地震後、情報提供の速さ・正確さ・明瞭さが貸主評価の鍵に
モバイルアプリ、ロビーのデジタルサイネージ、SNS、メール等、複数チャネルを使ったテナント通知が好事例として紹介されている
今後は、地震時対応マニュアルの整備・共有もスタンダードになると見られる
一部企業では、高層ビルの高層階よりも低層階や低層ビルを選好する傾向が出ている
老朽化ビルからの移転ニーズや、安全性確認が取れるまでの判断保留など、意思決定の変化が見られる
CBREは、「ほとんどのバンコクのオフィスビルは構造的に問題はなかった」としつつも、素早く対応し、明確にコミュニケーションを取った貸主の信頼性は向上したと指摘。反対に、情報提供が遅れた物件ではテナント離れが進むリスクがあるという。
また、今後は安全性が品質の新たな指標として重視されるようになり、「フライト・トゥ・クオリティ(質への移行)」の傾向がさらに強まると予想されている。古いビルの貸主には、競争力維持のための新戦略が求められそうだ。