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今こそ攻めのオフィス移転〜コロナで変わる働き方、新たなワークプレイス〜

BKK Office Navi 編集部
特集
2021.Feb.03

新型コロナウイルスを機に、オフィスの在り方が変わろうとしています。通勤に伴う感染リスクを減らすためリモートワークが普及し、社内においても感染対策が求められるようになりました。これまでのオフィスの機能を見直す企業も少なくありません。コロナ禍を経て、今後のオフィスはどうあるべきなのか、そして企業はどのような手を打てばいいのか、90万㎡以上の事業用不動産取引実績を持つGDM(Thailand)が解説いたします。

新型コロナで見直される オフィスの在り方

今年に入って新型コロナウイルスの感染拡大を受け、感染リスクをはらんだ通勤電車や社内における3密(密閉、密集、密接)を避けるため、多くの企業がリモートワークを取り入れました。

日本のパーソル総合研究所が企業の正社員2万人以上に行った調査によると、国内での感染が広がり緊急事態宣言が出される前の3月のリモートワーク(原文ではテレワーク)実施率は13.2%でしたが、4月7日の緊急事態宣言(当初は7都府県対象)発令後は27.9%と2倍近くに伸びました。東京都に限れば、49.1%(3月は23.1%)に上ります。

タイでも国内感染の拡大を受けて3月26日に非常事態宣言が出され、その前後からWork From Home(WFH)という言葉でリモートワークの導入が広がりました。

自宅でのリモートワークに加えて、リモートワークとオフィス勤務を組み合わせたローテーション勤務、本社・本拠地から離れた場所に設置されたサテライトオフィス勤務など、多様な働き方が企業の間に広がりました。

リゾート地に滞在しながら働く、ワーク(仕事)とバケーション(休暇)を組み合わせた「ワーケーション」なる言葉も浸透しました。そして感染拡大が一段落した後も、一部の企業はそれらを常態的に導入する方針です。

新型コロナウイルスをきっかけに働き方が変わり、企業は今後のオフィスの在り方を見直し始めています。社員全員が一律に出社するという既存のオフィス概念が揺らぎ、「ウィズコロナ」や「アフターコロナ」におけるオフィス環境の「ニューノーマル(新常態)」を考え、オフィスの再構築に取り組む必要に迫られています。

万能ではないリモートワーク

リモートワークのメリットとして、企業からすれば社員が出社しないことで交通費やオフィスの光熱費が削減できます。出社する社員が減ったことでオフィスそのものを縮小などすれば、企業にとって人件費の次に大きな経費であるオフィス賃料も下げることができます。災害時などの緊急事態にも、事業継続性が確保しやすくなります。

社員にしても、通勤や身支度がなくなることで時間を有効活用でき、通勤に伴うストレスからも解放されます。自分のペースで仕事ができるようになり、家族との時間も増やすことができます(図表1)。

ただ一方で、様々な点からオフィスの重要性も再確認されました(図表2)。

オフィスが持つ大きな機能の一つに、社員同士のコミュニケーションの活性化があります。同じ空間にいることで意図せず会話が生まれ、今まで気付かなかった相手の考えを知ることができたり、新たな視点を得ることができて仕事が円滑に進んだ経験は多くの人にあると思います。

リモートワークではオフィスという共通の場がなくなることで、社員同士のコミュニケーションが希薄となって報連相が疎かになったり、直接話せばすぐに解決できるような小さな問題が尾を引いて大きな問題になってしまうことがあります。仕事のON/OFFの切り替えが曖昧になり、結果として長時間労働になってしまったという声も挙がっています。

企業にとっても社員への目が行き届かなくなり、労務管理が難しくなります。また、社内データのセキュリティ体制も新たに構築する必要があります。若手社員の教育や企業の価値観、ビジョンの共有も課題です。

特にイノベーションが求められる仕事では、対面の会話などから得られる創造性や偶発性が重視されます。オンライン会議システムもかなり普及していますがまだ一部の機能補完に留まり、複数の部署がコラボレーションするような業務には、オフィスという場が必要なことも判明しました。

2013年に米Yahoo!はそれまで推進していた在宅勤務(≒リモートワーク)を禁止したことで話題となりました。当時のメリッサCEOは「在宅勤務は今現在のYahoo!にとっては適切ではない」「人は集団になった方がイノベーティブになる」と語ったそうです。

オフィスは単に社員が仕事をするという物理的な機能だけでなく、イノベーションの創出を支えるインキュベーション(孵化)機能も提供してます。オフィスがなくなることでこのような機能が失われ、企業の成長に欠かせないイノベーションが生まれづらい組織になる恐れがあります。短期的には問題がなくても、中長期的に見ればマイナスの影響が生じかねません。

オフィスの空室率と今後の見通し

しかし、「ニューノーマル」のオフィスの在り方として、社員全員の原則出社が当たり前の時代には戻らないでしょう。新型コロナウイルスを機に、大量の社員を一箇所に集めて働くため、主要な駅から近くて広いスペースを確保するという今までのオフィス観は揺らいでいます。

完全にリモートワークにする企業、オフィスへの出社に戻す企業、リモートワークと出社の併用をする企業というように、企業に応じて多種多様な選択ができるようになっていますが、それに伴いオフィスの空室率は上昇していくかというと、一概に断言できません。いわゆるグレードAと呼ばれるような、人気エリアの最新オフィスビルには依然として需要があると想定できるためです。

仮にそういったオフィスビルに空室が出たとしても、これまで入りたくても入れず、グレードBに入居していた二番手企業によって空室は順次埋められていくでしょう。また、オフィスビルも一番手企業の退去に応じて、賃料を下げる可能性もあります。

そして、二番手企業が退去した物件は、そこに入りたかった三番手企業が埋めていくといった連鎖が生じ、最終的に不人気エリアにある築年数の古いオフィスビルは淘汰されていき、建て壊しやリノベーションへの転換を迫られると展望できます。

ニューノーマル時代のオフィスの存在価値

リモートワークは企業のコスト削減など大きな恩恵を得られることが分かりましたが、先に触れたようなデメリットもあり、今後も完全なリモートワークの導入が社会の趨勢にはならないと予測されます。

現に、世界的に見ても企業の判断は分かれています。FacebookやTwitterのように全面的なリモートワークに切り替える企業もあれば、日本の伊藤忠商事は緊急事態宣言解除後に生産性の低下などを理由に、段階的に原則出社へ切り替えました。ただその後、国内の感染再拡大を受けて再度リモートワークに戻しています(図表4)。

グーグルの親会社アルファベットは9月、米カルフォルニア州の約16万㎡の土地に住宅や小売店、公園、娯楽施設、約12万4000㎡のオフィス空間を建設する「ミドルフィールドパーク・マスタープラン」を発表しています。通勤の負担や感染リスクの少ない職住近接の、言わば企業城下町を新たに作り出す計画です。

不動産大手のCBREグローバルリサーチが6月に各国のオフィステナントを対象に行ったアンケート結果によると、感染が収束した後に「オフィスの重要性は大きく減る」と考える回答者は13%と少数に留まりました(図表3)。

人と人とを結び付けるオフィスの役割がまだ期待されていることを示唆しており、個々の企業の特性に応じて様々な働き方、オフィス形態を使い分ける企業が多くなると見られます。

オフィスの縮小移転は 「攻め」の経営判断に

新型コロナウイルス感染拡大の中で行わざるをえなかったリモートワークは、働き方の概念を覆させるほどのインパクトがありました。

今後、社会の変化が見込まれる中、オフィス賃貸に支払っている固定費は、本当に適正なのか改めて考える時期に来ています。リモートワークがスタンダード化した「ニューノーマル」の働き方を視野に入れ、オフィスに持たせる機能の見直しが必要になっています。

これまでオフィスの縮小移転と言うと、事業の衰退や失敗といったネガティブなイメージが付きまとうものでした。しかし、新型コロナウイルスによって、その考え方に大きな変化が生まれています。固定費の中で人件費の次に占めると言われるオフィス賃料を見直し、固定費を削減して事業を持続化、その上でオフィスの付加価値向上を図る企業が増えてきています。

リモートワークの導入で人が少なくなったオフィススペースに賃貸料を払い続けるのではなく、これからの働き方の再構築と、それに見合うオフィススペースの戦略的見直しをする大きな機会です。

今、オフィスを縮小移転することは、決して後ろ向きで消極的な決断ではありません。今後の企業運営の在り方までを視野に入れた、攻めの経営判断だと言えます。

メリット・デメリット早見表から移転先物件を選定

現オフィスから新オフィスへ移転した際に得られるメリット・デメリットを把握し、移転の目的や何に優先順位を置くかを踏まえ、移転先を検討することが重要です。

オフィス移転におけるコストシミュレーション

まず現在のコストを見える化

オフィス移転の具体的な検討に入る前に知っておきたいのは、「どれくらいのコストを削減できるのか」という概算です。

企業が活動するためには、様々なコストが掛かります。健全な経営状況となるには、節約できるところはできるだけ節約して、なおかつ売上を増やすことが必要です。売上は目標通りにはいかないこともありますが、コストならば比較的正確に把握できます。売上を伸ばすだけではなく、経費を削減することで純利益を増やすこともできます。

どこに無駄が多いのかは各企業によって異なります。まずはオフィスに掛かるコストを正しく理解して、自分の会社のどこに無駄があるのか把握します。その上でコスト削減できるところはしっかりと削っていくことが大切です。

オフィスのランニングコストの内、①〜④は無駄な部分があればすぐに改善に取り掛かることができます。一方、⑤のオフィス賃料についてはその他と比べると高額でもあり、きちんとした計画に基づき取り組むことが重要です。コストパフォーマンスに優れたオフィスに再構築するため、思い切って移転してレイアウトから考え直すというのも一つの方法です(図表5)。

コスト削減は無駄遣い防止というだけではなく、企業の純利益を増やすという営利活動でもあります。

コストシュミレーションの進め方

健全な経営を維持するためには、オフィス賃料は粗利益の10%~20%以内に設定するのが妥当と言われています。例えば月間の売上が2000万バーツで粗利益率が30%ならば、60万~120万バーツがオフィス賃料として適切となります。

立地条件が良く賃料が高額なオフィスへ入居することで増収を見込める事業ならば120万バーツ、周辺環境の影響をあまり受けないならば60万バーツで問題ないといえるでしょう(図表6)。

現在、好立地にある賃料の高い物件にオフィスを構えているものの、実はどこにオフィスを置いても業務にはあまり関係がないという場合、より安い物件に引っ越すのも一つのコスト削減方法です。

もちろん移転コストは必要ですが、毎月の家賃の差額を考えれば1年ほどで回収できることも珍しくありません。

オフィスの移転・縮小を検討する際には現在の契約条件を見直し、移転までに掛かる費用を把握した上でコストシュミレーションをすることが重要です。

賃料、広さ、契約条件、内装内容により異なるため、それぞれの企業の状況を把握した上で具体的なコストシミュレーションが必要です(図表7)。

❶ 徹底的なコスト削減

【移転前問題点】

① 賃料が高い
② オフィス面積が大きい
③ 契約残存期間が1年

リモートワーク導入でデスクに空きが・・・ 家賃が高いので縮小移転したいが、 契約があと1年残っているので移転すべきか悩んでいる

従業員90名の商社A社は新型コロナウイルス感染症による経済活動停止の影響を大きく受けました。消費減速や入国制限などによる事業実施への障害により、自社の経営状態が悪化しています。リモートワークを導入したことで出社人数は以前の1/3に減っています。現オフィスは900㎡と面積も大きく、賃料単価も高いのでできる限り削減を検討したいのですが……。また、契約残存期間は現状1年間あります。


問題① 賃料が高い

→築年数が古くても家賃単価の低い物件に移転

Park VentureはグレードAのオフィスです。駅直結、築年数の浅さから賃料が高くなります。Ocean Tower 2はグレード、通勤利便性、築年数の面で劣りますが、その分賃料を1/3近くまで削減可能です。

問題② オフィス面積が大きい

→日々の出社人数から収容人数を算定し、適正なオフィス面積へ縮小

リモートワーク導入後に無駄をなくしたオフィス面積に縮小ができます。収容人数が30名~40名ほどの場合、執務室の他に会議室や倉庫などを含めても300㎡あればオフィスとして十分です。

問題③ 契約残存期間が1年

→契約残存期間を残して移転した場合にもコスト削減になるかシミュレーション

契約残存期間1年時点で移転プロジェクトを発足した場合、実際の移転日までは6ヵ月ほどが掛かります(オフィス選定、契約手続き、内装施工期間含む)。

以上を踏まえ、契約残存期間6ヵ月分残っている時点で契約解除した場合に掛かるペナルティーがどれほどかを事前に確認することが重要です。

タイにおいて、入居時に支払いをした3ヵ月分のデポジットが契約満了後に返金となりますが、途中解約の場合は没収となります。また、ビルによっては残存期間分(今回のケース:6ヵ月分)の賃料をペナルティーとして支払う必要があるため、計9ヵ月分の賃料をペナルティーとして支払う必要が出てきます。

今回のケースのように追加投資額に加えペナルティーを支払った場合でも、1年4ヵ月で回収できる場合もあります。

 ❷ リモートワークを積極導入。利便性重視のオフィスへ!

【移転前問題点】

① 利便性が良くない
② オフィス面積が大きい
③ オフィスの機能性に悩んでいる

オフィスまでのアクセスが駅から車で20分と利便性が悪い。オフィス面積が大きいので縮小移転したいが、来客も多いので、駅近の物件に移動したいと考えている

従業員200名のIT/WEB関連企業B社は新型コロナウイルス感染症をきっかけにリモートワークを導入しました。もともと在宅でも可能な業種なのでアフターコロナ時代でも引き続きリモートワークを積極的に取り入れるつもりです。現オフィスは2,000㎡(賃料単価:450バーツ/㎡)と大きい面積だったので利便性を犠牲にし賃料単価を抑えていました。まもなく契約満了となるので移転を考えていますが、移転後のオフィスの機能性を悩んでいます。ただ、完全なリモートワークはデメリットもあるのでオフィスは貸借し続けることを希望しています。


問題① 利便性が良くない

→通利便性/ファシリティ/安全性などが充実した物件へ移転

Italthai Towerは最寄りの駅から徒歩で通勤はできません。車での通勤でも渋滞の多い立地です。またビルの築年数も古くグレードも高くない物件のため、賃料単価は比較的安価です。

Bhiraj at EmQuartierは、賃料単価は高いですが駅直結・築年数が浅い・グレードA・商業施設に隣接・セキュリティレベルの高さなどは申し分ありません。

問題② オフィス面積が大きい

→日々の出社人数から収容人数を算定し、適正なオフィス面積へ縮小

リモートワークを導入しても出社が必要な部門の人数や日々出社する人数を踏まえ、適正なオフィス面積への縮小が可能です。

問題③ オフィスの機能性に悩んでいる

→アフターコロナの自社の働き方に適した仕様のオフィスデザイン・レイアウトへ

リモートワークの積極的な導入により出社する社員数が毎日異なる場合、固定席のあるオフィスという前提に拘る必要はなくなります。

日々の出社人数が40名〜50名程度の場合、執務室の他に会議室や倉庫などを含めるとオフィス面積は400㎡ほどあれば十分です。しかし、適正な面積より広くゆとりのあるオフィスにすると、空いたスペースをカフェなどの共有空間やパーソナルな集中ブース、多様なタイプの会議室を設けるなども可能です。

また、デスクトップ型のパソコンからノートパソコンに変更し、固定席ではなくフリーアドレス型の執務室にするなどの工夫もできます。

今回のケースの様にオフィス適正なオフィス面積を400㎡と想定した場合は、追加投資額を約2年7ヵ月で相殺できますが、オフィス面積を少し大きく500㎡にした場合でも、追加投資額は約4年5ヵ月で相殺可能となります。

 ❸ 自由度重視!カスタムオフィスビルへ

【移転前問題点】

① キッチンが設置できない
② 駐車スペースが不足している
③ 1拠点に関連会社を集約したい

オフィスビルの規定が厳しく、調理や実験などができない。1拠点へ集中したいが、大きな面積の物件が見つからない。見つけたとしても、駐車スペースが不足している

大手食品関連企業C社はこの度、研究開発部門を置くことになりました。研究開発部門は試作を行うため、キッチン設備や冷蔵室の設置が必要です。しかし、キッチン設備を置くことが可能なオフィスビルが見つかりません。また、複数あるグループ会社の所在地が異なっています。必要なオフィス面積の空き物件が見つからなかったり、複数登記ができないなどが複数拠点となっている理由ですが、できることなら1拠点に集約したいです。駐車スペースが不足しているため、駐車スペースが充実していることも移転先に求める条件です。


長期リース(BTS*)物件

長期間の賃貸が可能です。そのため、バンコク市内の一般的なオフィスビルのような契約更新時ごとの賃料上昇の影響を軽減できます(契約時要交渉)。  基本内装付きで初期投資はかかりません。ただし、家具/希望のリノベーションについては別途費用が掛かります。

※BTS(Build to Suit):ビルド・トゥ・スーツとは入居するテナントの要望に沿った用地・設備を兼ね備えた施設を設計・建設・運営し、長期リースで提供する、いわばオーダーメイド型の開発手法

自社購入物件

土地・物件の購入が可能です。

初期投資に費用は掛かりますが、企業の資産となります。価格が上昇する立地に自社購入物件を立てることでインフレへのリスクヘッジや、土地価格が上昇した際は売却し利益にできます。

また、他の企業に物件の一部を貸し出すことで、安定した不動産収入を確保することも可能です。

※タイで土地を取得する際には、土地法や外国人事業法の外資規制があるため留意が必要

オフィス移転チェックリスト

オフィスの移転には、移転の目的に適う場所の選定から現在利用するオフィスの解約手続きまで、一般的に半年から1年程度の期間が必要となります。コロナ後に向け、オフィスの縮小移転を検討している企業向けに必要なポイントと手順をチェックリスト形式で解説します。

※赤字はコロナで特に重要チェック部分

 

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