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今回は、2020年時点のタイ・バンコクのオフィス市場についてご説明を致します。
2000年代初頭のタイ・バンコクのオフィス市況は、2010年後半と比較すると規模も小さく成長性も乏しいものでした。バンコクのオフィス賃料相場はシンガポールやクアラルンプールなどの東南アジアの他の都市に比べて低い水準であったため、不動産ディベロッパーにとっては、オフィス開発に投資妙味がなく、投資効率の良い住宅開発が主流でした。
00年代後半に差し掛かり、BTSやMRTなどの都市交通網の発達によって都心部へのアクセスが向上したことから、次第に都心部にある駅周辺のオフィス賃料相場が上昇し始め、オフィス開発にも拍車がかかってきました。
10年にはオフィス供給面積は800万㎡に達し、20年時点で900万㎡を突破しています。外国直接投資の増加とタイ内需の成長によって、大量にオフィススペースが供給されても需要でカバーされ、空室率は7%程度の低水準を保っています。
22年までにバンコクのオフィス供給量は約1000万㎡に達すると予想されます。
バンコクのオフィス市場は、過去10年間で需要が供給を10万㎡以上も上回り、一等地の賃料は50%以上も高騰しました。その上昇率は、シカゴ、マドリードなどの市場に匹敵する水準です。
この10年の間に、築年数が古く需要の低いオフィスビルの稼働率は低下しましたが、それ以外の稼働率は上昇しています。特にグレードAは顕著で、賃料の高騰にも関わらず入居率は84%から94%近くまで上昇しています。
19年第一四半期、グレードAの中心業務地区(CBD)のオフィス賃料は前年比3.8%増の1036バーツ/㎡(月)でした。20年第一四半期は前年比6.2%増の1100バーツ/㎡(月)となり、20年第一四半期のオフィス賃料は前年比に比べ上昇率の拡大が見受けられます。
20年には10の新規プロジェクトが完了し、市場に21万㎡のオフィススペースが追加される予定です。そのうち6の新規オフィスビルは、CBDに位置します。 CBDエリア以外は地価が比較的高価格でないため、現在建設中であるBTSやMRTの新路線沿いなどがオフィス開発の新しい候補地となっています。
20年から23年までのバンコクのオフィス市場は、120万㎡(年平均30万㎡)の成長が見込まれています。
景気後退を鑑みるとオフィスの供給過多が不安視されますが、市場のニーズを捉えたビルについては引き続き堅調に推移すると見込めます。
オフィスの重要要素は立地であり、駅直結もしくは駅から徒歩3分圏内は需要があります。バンコク都心部では駅周辺の立地が非常に限られており、今後大量のオフィス供給があっても駅周辺の物件は高価格でも人気が根強いと予想できます。
一方で、景気後退の影響やCBDエリア内の価格高騰を避け、賃料コストの削減を検討する企業にとっては、CBDエリア外の低価格物件が選定対象となり得ます。 今後は、オフィス市場も勝ち負けが明確になるため、入居率の低いオフィスビルについては、賃料を減額する価格競争戦略か、立て直しやリノベーションなどのバリューアップ戦略、もしくは物件を売却するバイアウト戦略といった選択を迫られることになるでしょう。
今年から土地家屋税が改正され、オフィスに入居する企業にも影響があります。旧法はリース料に対して12.5%の税額が徴収されていました。
新法によると資産の評価額を課税標準とし、税計算をしますが、オフィスビルと入居企業の負担については明確にはなっていません。
また、新法に改正されても、オフィス賃貸契約書の税部分の改訂は現状なされていません。
オフィスビルとの賃貸契約では税負担の区分についての商習慣が確定していないため、今後の動向に留意が必要です。
新型コロナウイルスにより、タイと世界の経済は大幅に減速し、企業は新規投資に対し慎重な姿勢です。しかしながら、バンコクオフィス市場は他のセクターと比べ短期的な影響は少ないと見込みます。
理由は、バンコクのオフィス賃貸契約期間にあります。バンコクのオフィスの契約期間は通常3年となり、途中解約の場合は残存期間分の賃料を負担しなければならないなどデメリットが大きいです。そのため、景況悪化によりオフィススペースの縮小を検討しても、安易に移転はしづらい状況です。
新型コロナウイルスをきっかけに、多くの企業がリモートワークの導入に踏み切りました。新型コロナウイルスが終息後も、継続してリモートワークを行う企業の増加が想定されます。将来的には、企業は“オフィスの分散”やオフィスでの業務が必要な部門だけ出社する“縮小したオフィス”を構えるといった選択肢が増えます。これは、オフィス需要の停滞を招き、長期的な視点で捉えるとオフィス市場へ賃料相場の下降などの影響を及ぼすと見込めます。
新型コロナウイルスによる、入居企業とオフィスビルの契約諸条件の交渉はこれから本格化するので、市場の動向は引き続き注視が必要です。
このオフィス物件が気になる、もしくはバンコクのオフィス探しでお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。